今の日本は非常に厳しい転換点にあるといえます。して、何よりも日本に生きる人々が、自分たちの将来に対して明るい展望を見出すことができず、漠然とした閉塞感と不安にさいなまれています。
そのような状況にあって、今後10年、我々には何ができるでしょうか?
何によって未来を切り開くべきでしょうか?
私たちは「最先端の科学技術を現在の社会システムの様相に的確に適用させる仕組みづくり」が最も重要だと考えています。
従来、基礎研究 → 技術開発 → 産業応用 → マーケティング → 消費など、価値を伝達や増幅する「広義のサプライチェーン」は、それぞれの分野が、高度化、複雑化したことによって、分断して扱われています。
そのために多くの弊害が生まれ、優れた科学技術や価値のある素材が死蔵され、社会に有効に活用される機会を失っていることがありました。
神成淳司 研究室では、基礎的なサイエンスの分野から、それを社会に適用し、社会システムとしての産業化までの一連の流れを確実にとらえる、具体的な取り組みを実践しています。
博士(工学)
慶應義塾大学 環境情報学部 教授
内閣官房 副政府CIO / 情報通信技術(IT)総合戦略室長代理
国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 農業情報連携統括鑑
1996年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
2004年岐阜大学大学院 工学研究科 博士後期課程修了。博士(工学)。
1996年 IAMAS(岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー)助手。同 講師、岐阜県情報技術顧問(併任)等を経て、2007年慶應義塾大学着任。環境情報学部 准教授、医学部 准教授(兼担)を経て、同大学 環境情報学部 教授(現在に至る)。
2017年より、静岡県が慶應義塾大学との協定に基づき設立した研究拠点「AOI(Agri Open Innovation)パーク」において、一般財団法人アグリオープンイノベーション機構 統括ディレクター、及び慶應義塾研究拠点の責任者(慶應義塾大学 SFC研究所 AOI・ラボ 代表)を務める。
産業構造審議会(経済産業省)、内閣官房 医療情報化タスクフォース、東日本大震災 復興構想会議専門委員等の公職を歴任後、2011年内閣官房着任。
2014年より、内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室長代理 / 副政府CIOを併任。スマート農業、医療ICT、マイナンバー、情報セキュリティおよび地方創生を始めとした政府横断的な様々な情報政策の立案と推進に関与。
2018年より、内閣官房 健康医療戦略室次長を併任。
2009年に熟練生産者の暗黙知の継承をテーマとする研究領域「AI(アグリインフォマティックス)農業」を提唱。現在、国内各地において熟練技能の継承に取り組む。
2017年より、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「次世代農林水産業創造技術」において、我が国農業の基盤となるデータプラットフォーム「WAGRI」の研究開発を主導。現在、農業データ連携基盤協議会 会長を務める。
2018年より、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「スマートバイオ産業・農業基盤技術」において、スマートフードチェーンシステムの構築を担当(課題B-1-1)。
2018年より、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構) 農業情報連携統括監を併任。
情報科学(産業応用、知識情報科学)、農業情報科学、AI農業、サービスサイエンス、情報政策
「スマート農業」 監修 出版社:エヌティーエス 2019/03 ISBNコード:978-4-86043-584-4
「ITと熟練農家の技で稼ぐ AI農業」 出版社:日経BP社 2017/02 ISBNコード:978-4-8222-3915-2
「計算不可能性を設計する ITアーキテクトの未来への挑戦」 出版社:(株)ウェイツ 2007/04 ISBNコード:978-4-901391-80-1 他
超高齢化社会が到来し、大きな社会変革が迫られています。現状の社会システムを維持しようとする限り、日本社会には経済的破綻に直面します。このような状況のなか、何よりも今の日本に生きる我々を含めた多くの人が、自分たちの将来に対して明るい展望を見出す事ができず、漠然とした閉塞感と不安にさいなまれているのではないでしょうか。
このような状況にあって、今後10年、我々には何ができるでしょうか?何によって未来を切り開くべきでしょうか?
私たちは、最先端の科学技術を現在の社会システムの様相に的確に適用させるための仕組みづくりが最も重要だと考えています。従来、基礎研究⇒技術開発⇒産業応用⇒マーケティング⇒消費 など、価値を伝達・増幅する「広義のサプライチェーン」は、それぞれの分野が、高度化、複雑化したことによって、分断して扱われています。そのために多くの弊害が生まれ、優れた科学技術や価値のある素材が死蔵され、社会に有効に活用される機会を失っている事がありました。
本研究会は、このような分断されているテーマを統合的に扱うことで新たなイノベーションを社会にもたらす取り組みを、プロジェクトベースで実施します。特に力を入れているのが、ヘルスサイエンス分野です。ヘルスサイエンスは、数年前から国内外で注目を集めてきた新しい研究分野です。ヘルスサイエンスの三要素と言われる「食」、「運動」、「幸福」のうち、特に「食」に着目し、基礎的なサイエンスの分野から、それを社会に適用し、社会システムとしての産業化までの一連の流れを確実に学習した上で、具体的な取り組みを実践します。 そのために、基礎的なサイエンス分野では(独)理化学研究所と、医療応用分野では、慶應義塾大学医学部、国際医療福祉大学などとそれぞれ連携し、さらに社会実践の現場として、様々な企業と連携した取り組みを進めています。
シラバス技術は世の中に変化を起こしてくれます。しかし、新しい世の中を創る時、与えられた技術だけを使っていては変化を起こすことは難しいです。また、従来用いられ てきた様々なITソリューションやツールの多くは、コンピュータの中の世界に変化を起こしてきたが、社会とはかけ離れた関係にあることが多いです。
だが、これから社会で変革を取り扱っていくためには、現実社会のリアルな情報をどのように利活用し、現実社会にどのような具体的な効果を及ぼしていくかが重要となってきています。
本授業では、現実社会と連携した取り組みを実践するための基礎的なツールや考え方を、実践を通じて習得する事を目的とします。画像処理を簡便に扱うことが出来る業務用カメラシステムを用い、さらにデザイナーやマネージメント層などの工学的素養を持たない方々が扱うこと も想定したソフトウェアを活用し、自分たちの目的に即した仕組みを短時間でプロトタイピングすることで、非常に基本的なものではありますが、社会 問題を解決する仕組みを体感する事が可能となります。
* 2011年度は、ダンス習得、お金の計算、次世代Skype等に関して、行ないました。
シラバス本格的な情報社会が到来した現在、社会システムの構想・形成プロセスにおける情報技術の関与は避けられないものとなっています。社会全体における閉塞感が増大する中、我々はどのような社会システムを構築していくべきなのでしょうか?
本授業は、社会の中で多様なソリューションやサービスを展開する様々な企業と連携し、実際に自分たちが社会における実践を成し遂げるために必要とされるスキルを養うために、これらの企業に対し、現実社会を見据えた具体的な構想を提案いただきます。現実社会において強い価値を示す構想とは、公共機関からの補助等がなくとも、利用者側に選ばれるものでなくてはいけません。実際に社会に適用されない構想の企画は言葉遊びに過ぎないのです。優れた構想に対しては、関連企業との連携に基づき、構想された内容を具現化するための支援も実施します。
シラバスデバイス,ソフトウェアを問わず、モノ創りの基本は、発想・設計(Plan)、プロトタイピング・計測(Do)、評価・分析(Check)、処置・改善(Act)を繰り返す螺旋状のプロセス(PDCA cycle)を実施し、完成度を高めることにあります。すなわち「試行錯誤」の実践です。
この科目では、ある程度の「発想→プロトタイピング」の経験を積んだ学生を対象に、次回の発想・設計プロセスに繋がる「評価→改善」に重点を置き、モノ創りのプロセスを実践的に議論します。
講義・演習は,3〜5セットを1クールとし、3〜4テーマ(調整中)によるオムニバス形式で進行します。各クール毎の自己レビュー、相互レビューとディスカッションを通して、自己表現手法と評価方法(質的考察力、量的考察力)の習得を目指します。
シラバスヘルスサイエンスは、病気になる前の健康状態の維持促進を目的とした新たな研究領域であり、医学、工学、科学分野の多様な知見が集まり、人々の健康状態の維持・促進につながる様々な取り組みが進められている。健康の維持、そして健康寿命の促進は、効果的な医療費低減方策の一つであり、関連産業への波及効果も高い。
本講座は、ヘルスサイエンス分野の基本的な概念や知識の習得を踏まえ、先端の研究動向について学び、今後の同分野の方向性について考える。
なお、一部授業は英語で講義を行います。
シラバスAIシステム (Agri-Informatics System) は、高齢化が急速に進む日本の高度な農業技術を次世代に伝えることを目的として、農林水産省が 2009 年に設置した「農業分野における情報科学の活用等に係る研究会」において、はじめてそのコンセプトが提示された。
高度な農業技術を次世代に円滑に受け渡すため、最新の情報科学等に基づく技術を活用した短期間殿の生産技能の継承を支援する新しい農業のため、熟練者の持つ問題発見・問題解決技能を、早期に継承していくためのフィードバックループを提供する学習基盤として、AIシステムの実証を行っている。
波長可変レーザーを用いた測定技術を応用し、農作物の生育にとって重要な環境因子について、園芸施設内の環境情報を面的に観測可能にする計測系の設計および計測基盤を試作。面的な環境・作物の連続計測と、熟練者の判断情報を統合し、経験の浅い栽培従事者への技術伝承に役立つ、作物状態の計測データを活用した支援システム基盤構築を目指し、非破壊連続計測による圃場環境および作物の内部状態のセンシングデータと、熟練者の判断データを統合し、技術伝承の効率化を目的としたプラットフォームの構築を行っている。
介護サービスは、現在、若年介護者層における離職率が他の業界と比べて突出して高い(約22%)一方で、有効求人倍率も高く(人手不足)、平均賃金も低いという構造的問題を抱えている業界である。また、介護の質が十分に定義されておらず、また介護の質を評価する仕組みも発展途上であるため、従業員である介護者の評価は、ほとんどの場合が年功序列的であり、勤続年数に基づくものになっている。このため、若年層にとっては、努力をする誘因が小さく、質を高める取り組みや習熟に対して介護者自身のインセンティブが乏しい状況である。
そこで、介護業務における情報活用基盤を用いた介護の質の評価に基づく、新しい「人財教育・評価サービス」を検討し、実用化を行うことを目指している。介護の質を評価するためのデータ取得方法とデータの標準的な分析手法を構築し、モデル事業者を中心とした介護の質に関するベストプラクティクスの抽出と、それに基づく人事評価支援サービスのモデルを作成、これらを活用し介護者の「気付き」を促進することで、介護サービス従事者の熟練化を支援する研修サービス等の構築・検証を行っている。
アグリインフォサイエンス・ラボは、熟練農家の生産性を支える暗黙知に着目し、その形式知化を行うとともに、形式知の継承伝搬を行う農業プラットフォームの構築を目的として立ち上げられました。農業はIT関連企業の参入が遅れている分野でもあり、農林水産省を始めとした農業関連研究機関との連携に加え、国内外のIT関連企業とも連携し、情報技術を活かしたプラットフォームの構築を図り国内外の農業生産効率向上に資することを目的としています。
超高齢化社会の到来を踏まえ、世界各国で「Health」をテーマとした様々な研究が取り組まれています。これらの取り組みは、「Health」分野において新たな知見をもたらすと共に、その知見活用は、健康状態の維持や老化抑制効果をもたらし、社会全体の医療・介護費用を抑制する事が期待されています。
この類の取り組みを長寿先進国として牽引していくために、社会への適用を見据えた「Health」分野研究の推進、社会適用を担う人材教育、そして成果適用を促進するための社会基盤の構築と産業化を手がけること、ヘルスサイエンス・ラボ(Health Science Lab)を設立しました。
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